助手席にピアス

ずっと疑問だった。

口数が少なく、感情がよくわからない時があるけれど、桜田さんは照れ屋で、優しくて、心の広い人だ。

そんな桜田さんと奥さんの間になにがあって別居に居たってしまったのか、ずっと疑問に思っていた。

でも、その謎がさっき解けてしまった。

クリスマスイヴの前日。私は桜田さんに家まで送ってもらっている最中に『イヴに奥さんと会わないんですか?』と尋ねたことがある。

あの時、桜田さんは『イヴだけでなく、俺はいつだってアイツに会いたいと思っているんだ』と静かに答えた。

そこまで奥さんの早百合さんを愛しているのに、会えない理由はただひとつ。ひとりで寂しさを抱えていた桜田さんを思うと、心が痛くなり、涙が零れ落ちた。

「おい。なんでお前が泣く」

「だって……」

白いバンを走らせる桜田さんは、ため息交じりに話を続ける。

「まったく……パティシエに憧れたところも、泣き虫なところも、お前は早百合に似ている」

「私が?」

「ああ」

今まで桜田さんが、早百合さんのことをひと言も口にしなかったのは、何年経っても心の傷が癒えないからだと思い知る。

「桜田さん、これから早百合さんに会わせてくれるんでしょ?」

「ああ」

「早百合さんはヤキモチを妬かない?」

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