助手席にピアス

土曜日の夕刻の高速道路は、短い渋滞を起していた。昼間はあれだけ光を反射してキラキラと光り輝いていた海も、今は呑み込まれそうな純黒の世界が広がっているだけ。

助手席の窓から流れる景色を楽しむことができない私は、ハンドルを握る桜田さんの横顔をじっと見つめた。

桜田さんは、朔ちゃんと奥さんの早百合さんの過去を、すべて正直に私に打ち明けてくれた。だから今度は、私が自分の思いをすべて打ち明ける番だ。

でも頭ではわかっていても、思うように言葉が出ない。何度も口を開き、そして何度も口を閉じてはうつむくという不可解な行動を取る私に桜田さんが気づく。

「どうした?」

「あ、あの。朔ちゃんは早百合さんのことを知っているの?」

思わず朔ちゃんのことを、話題にしてしまった。

「ああ。初めて朔が店に来た時、早百合のことを話たからな、墓参りにも行ってくれたらしい」

「そうなんだ」

過去の朔ちゃんはいつも私に優しくて、弱さを見せることなど一度もなかったことを思い出す。

でも朔ちゃんにも、辛くて悲しい過去があったことを知り、そして自分は朔ちゃんの表向きの顔しか知らなかったことを思い知り、胸が痛んだ。

「しかし朔が突然、店に現れて相談があると言ってきた時は驚いた。俺は朔に恨まれているとずっと思っていたからな」

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