助手席にピアス
琥太郎は、たしかに私のことを好きだと言ってくれたけど……。
帰省した時からすでに一カ月以上が過ぎた今では、あの出来事が夢だったのではないかと思ってしまう時がある。
朔ちゃんほどじゃないけれど、琥太郎だってほどほどにモテる。
会社の先輩に強引に連れて行かれた合コンで元カノから迫られたように、琥太郎が今でもフリーでいるという確証はない。
遠くの故郷にいる琥太郎のことを考えたら、ジワリと涙が込み上げてユラユラと視界が揺れた。
「琥太郎くんの気持ちは俺にはわからないが、思いを込めて作ったチョコを贈られて喜ばない男はいないぞ」
過去のバレンタインでは義理だったのにも関わらず、琥太郎は私からのチョコを恥ずかしそうに「サンキュ」と言って受け取ってくれた。
そして朔ちゃんとお父さんはもちろん、おじいちゃんまでも笑顔でありがとうと言ってくれたことを思い出す。
琥太郎に思いを告げられる絶好のチャンスを無駄にするのはもったいないよね。
単純な私は、すぐに前向きな気持ちになる。
「桜田さん。私、チョコを作ります!」
「ああ。わかった。で? どんなチョコを作りたいんだ?」