助手席にピアス
琥太郎が喜んでくれるといいな……。
そんな夢見心地な私は、桜田さんの言葉で我に返った。
「おい。このチョコをどうやって琥太郎くんに渡すんだ?」
「え?」
「お前、十四日は仕事だろ?」
チョコを作ることに気を取られていた私は、琥太郎にどうやって渡すかなんて考えていなかったことに、ようやく気づく。
本当だったら、直接会って手渡ししたい。
でも桜田さんの言う通り、明後日の十四日の火曜日は、私も琥太郎も仕事。琥太郎との距離を恨めしく思いながら、私は決断を下した。
「郵送します」
「そうか。大丈夫だ。一生懸命作ったんだ。きっとお前の気持ちは琥太郎くんに伝わる。だからそんな顔するな」
思いがけず桜田さんに励まされた私は、無理をして笑顔を作ってみせる。
「桜田さん。ありがとう」
「いや」
パティシエになることをあきらめた時も、上京したことを後悔しなかったのに……。
好きな人に会えないもどかしさを知ってしまった私は、ホームシックに似た感情を胸に抱くのだった。