助手席にピアス
二月十四日のバレンタイン当日。イタリアンレストラン・ボーノで本日のオススメの茄子のボローニャ風パスタを頬張っていても、バレンタインのチョコが琥太郎にちゃんと届くのか、気になって仕方がなかった。
「雛子、落ち着きなよ。まだお昼だよ。届くのは夜の九時なんでしょ?」
「う、うん」
朝からソワソワしている私の様子に、美菜ちゃんはあきれ返る。
琥太郎に贈るチョコを作った翌日、私は美菜ちゃんに桜田さんとのことをすべて語り、琥太郎を好きだと気づいたことを打ち明けた。
そして、バレンタインデーのチョコを手作りして、夜九時の時間指定をして郵送したことも話した。
「雛子」
「なに?」
「そんなに心配しなくたって大丈夫だって。チョコを受け取ったらすぐに琥太郎くんから、ありがとうって連絡が来るって」
美菜ちゃんに勇気づけられても、不安な気持ちは払拭されない。
「そうかな?」
「そうだよ。でも、こういう時って遠距離は辛いね」
「……うん」
今日の朝、美菜ちゃんは仕事が終わったら彼氏とバレンタインデートをすると言って、綺麗にラッピングされたチョコの箱を、ロッカールームで見せてくれた。
バレンタインデートを心から楽しみにしている美菜ちゃんが羨ましい。
こんなことなら無理をしてでも会社を休んで、琥太郎に直接チョコを渡しに行けばよかったかな……。
少しだけ後悔した。