助手席にピアス

なんとか平日の仕事を終え、迎えた土曜日。今日は、朔ちゃんとふたりだけのデート。

なにを着て行こうか悩んだ末に選んだのは、桜田さんにプレゼントしてもらったシンプルな黒のフレアワンピース。

私の姿を見たら、朔ちゃんはなんて言ってくれるかな?

期待に胸を膨らませると、約束通り十二時に迎えに来てくれた朔ちゃんの車に乗り込んだ。

「雛子ちゃん。今日は随分と大人っぽいね」

「だって朔ちゃんとふたりきりのデートだもん。オシャレしてきちゃった」

いつもとは少し違う私にすぐに気づいてくれるなんて、さすがだよね。

「うれしいな。雛子ちゃん、よく似合っているよ」

「朔ちゃん、ありがとう」

朔ちゃんに、子供っぽく思われなくてよかった。

ますます上機嫌になった私は、ハンドルを握る朔ちゃんに微笑んだ。

「朔ちゃん、これからどこに行くの?」

「お昼を食べたら雛子ちゃんの行きたいところに連れて行ってあげるよ。どこに行きたい?」

そう聞かれた私の脳裏に浮かんだのは、琥太郎の顔。でも、遠い実家へすぐに帰れるはずもない。だから私は、いつか体験してみたいとずっと思っていたことを朔ちゃんにおねだりした。

「私、観覧車に乗ってみたい」

「観覧車か。雛子ちゃんらしくていいね」

きっと朔ちゃんは、観覧車なんて子供っぽい私にピッタリだと言いたかったのだろう。

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