助手席にピアス

朔ちゃんがランチに連れて来てくれたのは、オフィス街のビルの地下にあるレストラン。いつもは人が途切れることがない人気店らしいけれど、土曜日の今日は休みの企業が多いのか、それほど店内は混み合っていない。

「平日のランチによく来るんだけど、雛子ちゃんにも食べさせてあげたいなぁ、と思ってさ」

朔ちゃんは慣れた様子でオーダーを済ませる。

日常のふとした時に、朔ちゃんが私のことを思い出してくれたことがうれしかった。

程なくすると、オーダーした骨つき仔羊の香草パン粉焼きが運ばれてくる。

「いただきます」

「どうぞ」

ナイフを入れるとサクッと音がする仔羊のお肉を、口に運ぶ。

「んっ! 朔ちゃん、お肉がすごく柔らかくておいしい!」

「きっと気に入ってくれると思ったよ」

莉緒さんには悪いけれど……。

テーブルを挟んで向かい合っている初恋の人の朔ちゃんを、ひとり占めしている喜びに浸る。

そして、ランチをペロリと平らげた後のお楽しみの登場に、私はまたも歓喜の声をあげた。

「うわぁ! おいしそう!」

「この店は食事もおいしいけれど、デザートもオススメなんだ」

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