助手席にピアス
テーブルの上に置かれたのは、真っ白なプレートに乗った存在感たっぷりのシフォンケーキ。多くの店がホイップクリームを添えるのに対して、この店のシフォンケーキはキャラメルソースとバニラアイスがトッピングされていた。
その名の通り柔らかくて、ふわっふわなシフォンケーキを口に入れれば、キャラメルソースのほろ苦さとアイスの甘さが絶妙なハーモニーを醸し出す。
「ん~! おいしい! 幸せぇ!」
「そう言うと思った」
つい、子供っぽい反応をしてしまった私を、朔ちゃんはクスクスと笑う。
だから私は名誉挽回とばかりに、背筋を伸ばした。
「朔ちゃん、知っている? シフォンケーキは失敗しやすいケーキとして有名なんだよ」
「へえ、そうなんだ」
さらに得意げに、シフォンケーキのうんちくを披露する。
「うん。上手く膨らまなかったり、穴が開いたりしやすいの。卵白の泡立て方も難しいし、微妙な焼き時間の調整とか、ちょっと油断するとすぐに失敗しちゃうんだから」
このシフォンケーキを自分が作ったような口ぶりで説明を終えた私は、自己満足しながら残りのケーキをゆっくりと味わう。
そして、すでにシフォンケーキを食べ終わった朔ちゃんは、頬杖をつくと褐色の瞳を優しく細めた。