助手席にピアス
「雛子ちゃんは本当にスイーツが好きなんだね」
「うん。パティシエになることはあきらめちゃったけれど、桜田さんのお手伝いをしているうちに、やっぱりお菓子作りが好きなんだって気づいた」
静かに語る私に向かって、朔ちゃんは穏やかな笑みを浮かべる。
「そっか」
「うん」
琥太郎と違って、朔ちゃんには自分の気持ちを素直に話せる。
ふたりは兄弟なのに、この違いはなんなのかな……。
そんなことを考えながら、最後のシフォンケーキを口に入れると朔ちゃんを見つめた。
「雛子ちゃん、そう言えばこの前はバレンタインデーだったけれど、彼氏にチョコをあげたの?」
琥太郎と同じように、朔ちゃんはまだ私に彼氏がいると思っている。
「朔ちゃん、私、彼氏とは別れたの」
「へえ、そうなんだ。その理由は琥太郎のことが好きだって気づいたから?」
私よりも私の気持ちをよく知っている朔ちゃんに驚きつつも、コクリとうなずく。
「だからね、私、一生懸命チョコを作って琥太郎に送ったんだけど……」
「けど?」
「琥太郎ったら、彼氏と仲良くしろよなんて言うから……私、琥太郎に鈍感!って怒鳴っちゃった」