助手席にピアス
ステンレス製のトレイの上に置かれているのは、ハート型に焼き上がったスポンジに生クリームでナッペされたウエディングケーキの土台。残りのデコレーションは、二次会会場で行う手はずになっている。
そのトレイに透明なアクリルケースの蓋を被せると、慎重に冷蔵庫に入れる。これでガトー・桜のでの作業はひとまず終了。
「桜田さん、じゃあ二次会会場で」
「ああ」
ケーキの運搬は桜田さんに任せて、午後二時時から執り行われるチャペルでの挙式に参列するために、私は一足先にガトー・桜を後にする。
無事にスポンジが焼けたことに安堵しながら、久しぶりに会う琥太郎の姿を頭に思い浮かべた。
琥太郎に話したいことが山のようにある。
逸る気持ちを抑えながら結婚式会場の東京プリマホテルに到着した私は、この前買ったベビーピンクのドレスに着替えるために、更衣室に向かった。
荷物をクロークに預けると声をかけられる。
「あら。雛子ちゃんじゃない」
「おばさん、おじさん、お久しぶりです」
琥太郎の両親に挨拶をする。
「本当、久しぶりね。まあ、会わないうちに綺麗になって」
数年ぶりに会った琥太郎のお母さんの社交辞令の言葉を素直に受け止めた私は、すっかり上機嫌。思わず頬を緩めていると、ダークスーツ姿の琥太郎がこちらに近づいて来た。