助手席にピアス

「よう。雛」

「うん。久しぶり」

成人式の時は、まだスーツに着られている感が否めなかった。でも今日の琥太郎は、タイトなスーツをスマートに着こなしている。

私が知っている少年時代の琥太郎ではないその姿に、胸がドキドキと高鳴った。

「会うのは正月以来だな」

「そ、そうだね」

琥太郎と最後に会ったのは、ふたりで初詣に出かけたあの日。その帰り道で私は琥太郎に告白をされた。

あれから三カ月近くが経った今、琥太郎の気持ちが変わっていても全然おかしくない。琥太郎に自分の思いを打ち明けようと決めていたくせに、いざ本人を目の前にした私の鼓動は、有り得ないほど早鐘を打った。

そんな中、おばさんは「雛子ちゃん。じゃあ、また後でね」と言うと、おじさんと共に忙しそうに親族の控室に向かってしまった。

「琥太郎は行かなくていいの?」

「ん? まあ、あとでな。それより雛、二次会のケーキはどうなった?」

フロアを横切り、ソファに座った琥太郎の隣に私も腰を下ろす。ふたりきりで会話をするなんて、これまで散々してきたことなのに、今の私はそんな些細なことすらうれしかった。

「午前中に土台だけ仕上げてきた。後は披露宴が終わったら二次会会場に行って、デコレーションしたら完成」

「そっか。楽しみだな」

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