助手席にピアス
「琥太郎ってさ、私のことを鈍感、鈍感って言うけど、琥太郎だってかなり鈍感だよ」
「俺のどこが鈍感なんだよ!」
「鈍感だから鈍感って言っているんじゃない!」
今日は、朔ちゃんと莉緒さんの結婚式。
こんなおめでたい日に、またケンカになってしまうなんて……。
込み上げてくる涙をグッと堪えた。
「雛、悪い。言いすぎた」
「ううん。私もゴメンね」
すぐに仲直りできたことに、ホッと胸を撫で下ろす。
「でさ、雛の家で俺はなにをすればいいんだよ。もしかしてトイレの電球が切れたから代えて欲しいとか?」
「そんなくだらないことじゃないもん!」
「じゃあ、なんだよ?」
そう聞かれても、困るよ……。
悩んだ末に言葉を濁らせる。
「……今は言えない」
「なんだよそれ。まあ、雛に招待されたんだ。喜んでお邪魔するけどさ」
「琥太郎、ありがとう」
お願いを断り切れない優しい琥太郎に対して、好きだという感情が胸いっぱいに膨らんだ。だから私は、予行練習も兼ねて自分にしか聞こえないほどの声で囁く。
「琥太郎……好き」
「あ? なにか言ったか?」
思ったよりも素早く反応を示した琥太郎に向かって、慌てて首を横に振る。
「う、ううん。なにも」
「そっか?」
隣で首を傾げる琥太郎の姿を見た私は、心の中で密かに思う。
やっぱり琥太郎って鈍感だよね、と……。