助手席にピアス
心から幸せそうな朔ちゃんと莉緒さんの姿を見た私は、また感動して涙が溢れ出てしまった。
「あ~あ、泣いちゃった。琥太郎、お前が責任を持って雛子ちゃんを慰めること。これは兄である僕からの命令。いいね?」
「はぁ? 兄貴にそんな命令されなくても、そうするし! ほら、雛。行くぞ」
「え? あっ……」
琥太郎は私の手首を掴むと、ロビーを横切り、角を曲がった。
涙で揺れる視界に映り込むのは、琥太郎の後ろ姿。その大きな背中について行くために、必死で小走りをする。
「こ、琥太郎、ちょっと待って……あっ」
普段履き慣れていないヒールのせいで転びそうになると、ふわりと身体を引き寄せられる。
「雛は本当に泣き虫だな」
転びそうになった私が辿り着いたのは、琥太郎の胸の中だった。力強い腕が私の背中に回る。
「琥太郎……」
琥太郎の腕に徐々に力がこもっていくのを感じていると、私たちの身体は簡単に密着した。この場所はロビーから死角になっているし、行き来する人の姿もない。
広くて頼りがいがある琥太郎の胸に甘えるように頬を寄せると、そっと瞳を閉じた。
少しだけ早く動く琥太郎の鼓動の音が聞こえる。
私だけじゃないんだ。琥太郎もドキドキしている……。
お互いの気持ちが一緒だと言うことがうれしくて、琥太郎の心音に耳を傾けた。でも……。