助手席にピアス

これは亮介の彼女である私に叩きつけられた、無言の挑戦状。

そう解釈をした。

けれど……。

「あっ! そ、それは、きっとアレだよ。ああ! ほら、この前、大学で一緒だった北山の引っ越しを手伝いに行っただろ? その時のメンバーの矢崎が落としたんだよ。ああ、そうだ、そうだ。そ、そう言えば矢崎からピアスが落ちていなかったかって、メールがきていたな。そうか、そうか。こんな所に落としたのか。矢崎もおっちょこちょいだな。雛子、これは俺が預かるよ。な?」

亮介は瞳をキョロキョロと泳がせて無駄に長い言い訳を口にすると、私の手の平からピアスを摘み上げた。そして、それをパンツのポケットに素早くしまい込む。

ツッコミどころ満載な亮介の態度を目のあたりにしたら、誰でも疑うでしょ?

亮介が浮気をしたんじゃなかって……。

いまだに視線を泳がせている亮介に詰め寄って、洗いざらい白状させようと決意を固める。でも、その意気込みも空気の抜けた風船のように、すぐに萎んでしまった。

今日は、私の二十四回目の誕生日。

丁度、仕事が休みの土曜日と重なったため、少し遠出をして海が見下ろせるリゾートホテルに一泊しようと、以前から亮介と計画を立てていた。

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