助手席にピアス
「雛子! 樋口さんとの誕生日デートは、どうだった?」
会社から徒歩三分の場所にあるイタリアンレストラン・ボーノに着いて席に座るなり、鈴原美菜(すずはら みな)ちゃんが瞳を輝かせて聞いてくる。
「うん。楽しかったよ」
「楽しいのはわかっているの! で? 誕生日プレゼントになにをもらったの?」
美菜ちゃんは同じ職場で働く同僚で、年齢は私より一つ年上。地方から上京してきた私にとって、東京での数少ない友人のひとりだ。だから、私と亮介が付き合っていることも知っている。
本日のオススメパスタでもある、卵とチーズの濃厚なソースが絡まったカルボナーラをオーダーすると、テーブルに頬杖をついた。
「それがね……」
あれから------。
私の二十四回目の誕生日は、出発時の時こそちょっとした問題が勃発したけれど……。
予約をしたリゾートホテルまでドライブを楽しみ、到着してからもホテルの前の砂浜で、海に沈む燃えるようなオレンジ色の夕日の美しさに感動しながらキスを交わして、幸せ気分に酔い痴れた。
そしてクラシックな雰囲気を醸し出すホテルのフレンチレストランで、ディナーを堪能する。評判通り、上品でおいしい料理に満足をして食後のコーヒーを口に運んでいると、突然テーブルに小さなホールケーキが運ばれてきた。