猫に恋する、わたし

帰り道、わたしはもう一度「NAO」を聴きながら歩いた。

急に訪れた冬の寒さにかじかんだ手を温めようとポケットに入れると、さっきしまっておいた歌詞カードの存在に気付く。


大きな片思い。


最後の歌詞にそう綴られている。

そして、その下に彼の字で


ー『すき』







お姉ちゃんには他に好きな人がいた。



わたしもよく知っている人でとても優しくて温かくて、ずっとずっと年上だったけれど、お姉ちゃんとわたしをまるで妹のように可愛がってくれた。

お姉ちゃんはよくその人の話をしていた。

だからわたしはお姉ちゃんの気持ちにすぐ気が付いた。



お似合いだった。

このままお姉ちゃんはその人と幸せになるんだろうなって漠然とそう思ってた。



だから。



もし時間を選べるとしたら、ってそんなふうにばかり考えて

もしお姉ちゃんがその人と出会う前に、出会っていたなら…

彼は。



わたしはーーーー。







「おい」





音色が、途切れる。





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