【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
1メートル……
すれ違う直前、チラリと前髪の隙間から右斜め前方にいる会長を見た。
先程同様、私の事など全く気にも留めていない様子。
それにほっとした私は、まだ会長が傍にいるというのに強張っていた身体を緩ませる。
もう、
大丈夫---
こちらを見向きしない会長はもう間もなく、私の横へと並ぶ。
そして…、
会長が私の視界から消えた。
良かった---
痛いくらいに鳴っていた私の心臓も、徐々に落ち着きを取り戻し始める。
これで安心だと、そう思っていたのに---
「待て」
ドクッ---
会長の声に折角落ち着いた心臓が一つ、大きな音をたてた。