恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「つらかったよね」
「でも、母はもっとつらかったと思う。子供を残して死んでしまうなんて、悲しかったと思います。僕は、母の為に夢を追っていたのかもしれない。そういう点では、真智と同じだ。母親を喜ばせてあげたい、母親に認めて欲しいと思うのは当然のことなんですよ」
慶次郎は、財布の中から一枚の写真を出した。
「これ、僕が撮ったんです。風景しか撮らなかった僕が最初に撮ったのが母だったんだ」
ボロボロになった写真に映っていたのは、とても綺麗な女性だった。
「きれい。慶次郎のお母さん?」
「そう。この表情が好きでね」
「とても嬉しそうな顔をしている。でも、少し寂しそうにも見える」
私がそう言うと、慶次郎は大きく頷いた。
「そう。この写真を見るたびも僕も感じるんだ。母は自分の病気を知っていた。だから、複雑な表情をしている。やっぱり、写真は人の心を写すものなんだなって。初心に戻りたいときにいつもこの写真を見る。そして、また頑張ろうって思えるんですよね」
写真を見つめた後、大事そうに財布の中に入れた。
慶次郎にとって、お母さんは偉大で、理想で、誰よりも愛している存在なんだ。