声が聴きたい
金曜日の昼前、まだ、満員と言うほどではないが、大切な、繊細な話をするような雰囲気でもなく、何も注文せずに出て、無言で店を探す。
「あれ、どうかしら?」と希美花が指差す喫茶店は、レトロな雰囲気のたたずまいで、開けてみると、店内も静かにジャズが流れてほの暗く
、話が出来そうだったので、そのまま席に着く。
「ねぇ……希美花さん……何科に来てたの?」
頼んだコーヒーが運ばれると、最初に口を開いたのはやはり美都子だった。
「っ!」明らかに動揺し持ち上げようとしていたカップを乱暴にソーサーに戻す希美花。
「わ、私は……」それきりしばらくまっても何も言わない希美花に向かい「なら、こちらの話を、感情をなるべく抜いて、事実を伝えるから、ともかく聞いてて?」と美都子。
「……わかったわ……」硬い表情になった希美花にあの、和希小2の夏から、今日までを、極力感想や思いは含めず、事実の事柄を出来るだけ正確に美都子は語りだした。
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置き去りにされていて、発見された時の和希、その後の難聴、小3の待ち合わせの駅で補導されたときの和希と転校するほどになった難聴、中学時代、その間にあった、祖母、祖父の死、高校での生活、そして、先月の希美花からの電話で先日まで入院……そして通院。