声が聴きたい
話の途中で度々口を挟もうとする希美花を眼で制し、ともかく、聞けと、一時間近くかけて話した。
「で、熱はおさまったけど、夏場のせいもあってね、食が進まなくて。来週からも栄養剤の点滴を週に三回も受けにくるのよ?耳も……今までで一番といっていいほど聴こえなくなってしまった……全ては、希美花さん、あなたがあの日、置き去りにしてからなのよ」そこまで言って、グラスの水を飲み干すと、美都子は『ふぅ~』と息をついた。
「あ、……わた、し……だって……まさか……」自分が思っていた幸せな娘とはかけ離れた事実を、簡単には飲み込めなかった。
和希は、嫌悪感なのか、微かに身体が震えたり頭痛がしたり……でも、母の話を聞きながら、『私にはこんなに思ってくれる母や家族、秀や加奈子達がいるんだ、この人一人の愛がなくても、もう、大丈夫、もっと、甘えさせてくれる人を大切にしなきゃ……強くならなきゃ』そんなふうに思え目の前にいる希美花への、こだわりが潮が引くようになくなっていく。
持ち歩いているメモ帳を取りだしおもむろに何か書く和希。
スッと希美花の前に出されたそれには、『私は、あなたには生んでくれたことへの感謝だけ、感じてます、ありがとう。それ以外には全くなんにもありません、だから、どうかあなたも私にこだわらずに生きてください。』とあった。