声が聴きたい


和希side

生みの母親が目の前にいる……微かに身体が震えてくるのがわかるが、あれほどに様々な感情を抱いていたはずなのに、何故だか心も頭も動かなかった、イヤ、震えがきたのだから、無意識では拒絶していたんだと思うけれど……


お母さんが間に入り、私に口が読み取れるよう『話をしよう』と持ちかけ喫茶店に入る。


奥の席に座った私は壁を背にするように横座りし、二人の会話を見逃さないようにした。


それに、正面に彼女の顔を見続けることは出来ない気がした。


お母さんは私と、家族のこれまでを時々言葉を選びながら、できるだけ正確に話してくれた。


私が転校するほどに、傷付いたと分かった時には、彼女の目にうっすらと涙がうかんだ。


でも『あぁ……私のことで泣けるんだなぁ』そんな風にしか、正直なところ感じなかった。


自分はもっと、もしも会うことがあれば、激情にかられて恨みをぶちまけるんじゃないかと、なんとなく思ってたから、こんな冷めた自分に驚いた。


そちらへの感情よりも、お母さん達への想いのほうが増してきて、思わず腕にすり寄った。


話を続けたまま優しい目で私を見てくれるお母さんに、私の顔は綻んでた。






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