例えばここに君がいて


 朝食もちゃんと食べた、自主トレのランニングも、その後のシャワーも完璧オッケー。


「悪いわね。サトルよろしくね」


双子と俺が揃っていなくなるということで、母さんはかなりごきげんだ。


「はい、電車代とおみやげ代。何か買って行きなさい」

「ん、サンキュー」


持たされた3000円を素早く財布にしまう。
なにせ斜め下から狙ってる守銭奴がいるからな。


「じゃあ行ってきます!」


サユちゃんに会いに行く。そう思うとなんか変に緊張してくる。
でも今日のチャンスは生かさないと。

 サユちゃんの家は利便性がいい場所にある。俺の家からガッツリ30分歩いたところにある駅から電車に乗ってひと駅。そこからは徒歩10分。大体1時間あれば行ける距離だ。
それでも、子供のうちはなかなか一人ではいけないものだが。


「あーもう、疲れたー。車で送ってもらえばよかったのにー」

「ルイ、ガタガタ言うな」

「……にーちゃん」


ぼそりとイッサが言うと、聞いてやらなきゃならない気がして立ち止まる。


「なんだ、イッサ」

「俺、足イタイ……」


たまにしか離さないくせに、一言の破壊力はルイの何倍もある。


「……土産買うとこで少し休むか」


結局、駅前のファーストフード店でジュースを奢らされるはめになった。
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