トマッタ時計
駅前に最近出来たショッピングセンターに付いてチャリ置き場に行くと、自転車はあるものの二人の姿は見当たらなかった。

「あの二人もう中入ってるってさ」

「そうなの?」

内藤くんの差し出してきた携帯のディスプレイを覗き込む。

 

 陽向へ!

 お前ら来るの遅すぎだから先に入ってるぞ!

 で、今更合流するのも面倒だから二人で楽しみますわ!

 どうぞそっちはそっちで楽しんでください(笑)

 6時にチャリ置きに集合な!

 ではでは!!
 
 航大                      



嘘だろー!!

時間を見るとまだ四時も来てない・・・。

あと二時間もあるのに、内藤くんと二人どうしろって言うんだよー!!

「行くか」

私の気も知らずに内藤くんは先に行ってしまった。

・・・取り残された。

「待ってよー!」

私は走って内藤くんを追いかけた。

「おせーし」

「ごめん・・・」

「どっか行きたいとこある?」

「んー、別にないなー」

「俺も」

俺もって言われてもねぇ・・・。

「どうする?」

「どうする?」

「どうしようね」

「最初はグー!じゃんけん」

「え!?」

いきなりじゃんけん始められて慌ててチョキだしたら、内藤くんはグーで・・・。

「はい、蒼井決めて」

「え、ちょっ、ずるくない!?」

「別に」

そう言って内藤くんは笑った。

わっ、内藤くんの笑顔みるの初めてかも・・・。

「なに?」

じっと顔をみていると顔を覗き込まれた。

「なんでもないです!!」

思わず大声で答えてしまった。

私の声に内藤くんだけでなく周りのお客さんもビックリしてからクスクス笑った。

あっ、また・・・。

「なに?俺の顔になんかついてる?」

「う、ううん!ただ内藤くんの笑顔初めて見たなって思って・・・」

「ふーん。確かにあんま笑わないかも。」

「そうなんだ」

どうりで見たこと無い訳だ。

「でも・・・」

「でも?」

「なんか蒼井といると自然に笑えるかも」

「え!?何で?」

「んー、変なやつで面白いから」

「なにそれ!失礼!」

「ははっ」

「なに笑ってんの?」

頬を膨らませると内藤くんはそれを見てまた笑った。

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