小春日和
 


一泊とはいえ、忙しい猛さんが唐突に告げた旅行。首を傾げる私を猛さんは、とろけるような優しい笑みを浮かべて抱き寄せチュッと唇をついばむ。



「ここの所ずっと出張やら仕事が忙しくて、寂しい面白いをさせてたろ?だから明日、明後日はうんと甘やかせてやるからな」



そう耳元で囁くと、仕事の途中で抜けてきただけだから先に休んでろよと言って、もう一度チュッとついばむだけのキスを残して仕事に戻って行った。





翌日、十時過ぎに五台の車に、猛さんと私を含め総勢十人の大人数で、車で一時半程の距離にある別荘に向かって出発した。



猛さんと私の乗った黒いフルスモークの高級車を、これまた黒いフルスモーク車が前後二台ずつに別れて、ぴったりと挟み込んで護衛しながら移動する様をみた人は、相当怖かっただろうと思う。



途中、山の中に隠れ家のようにして建つ風情ある料亭で、目にも楽しい素敵な会席料理を頂いたり、紫陽花が綺麗なお寺を猛さんと二人で散策したりして、別荘にたどり着いたのは夕方になっていた。



別荘と聞いていたそこは、私の想像なんかを遙かに越えていた。山の中に続く私道には、入り口に黒い鉄で出来た大きな門があって、そこから緩やかな斜面を暫く行くと、木々の合間から大きな屋敷が見えて来る。



屋敷の周りには高くてがっしりとした鉄のフェンスが取り囲んでいて、二つ目の門を潜ると、前日からこちらに来て色々と準備をしてくれてた三名の組員が出迎えてくれた。



 
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