小春日和
猛さんは何時もこんな風に手放しで誉めてくれるけど、子供の頃から誉めてもらった経験のない私は慣れなくて、どう返せばいいのか分からず言葉に詰まってしまう。
少し散歩に行こうと繋がれた手が、あったかい。
猛さんに連れられ、車で移動することおおよそ五分。
いいと言うまで目を瞑っていと言われ、取り敢えず瞼を閉じれば、ふわりと抱き上げらる感覚に、ちょっぴり怖くなって猛さんの首筋にぎゅっとしがみつく。
ククッと楽しそうに笑いながら、何処かに向かって歩く猛さん。ゆらゆらと揺れる体と、一歩踏み出す毎にジャリっとなる足音から、どうやら舗装されていない足場の悪い所を歩いているようだ。
けど、ちっとも不安じゃない。抱きしめてくれる腕も、頬に触れる温もりも、猛さんの全てが絶大な安心感を与えてくれるから。
いいものを見せてやるから、もう少し待ってろよ。そう楽しそうに告げる猛さんに、ワクワクとした気持ちでいっぱいになった頃、猛さんが立ち止まった。
「目を開けていいぞ」
その言葉に、閉じていた瞼をゆっくりと開く。目に映るのは街灯が一つもない、ただ月明かりだけの深い藍色の闇。