FACT!〜交わる赤〜
大森は、自分の家ではないのに、勝手に屋敷に上がり込み、話を進めた。
「こいつは横山千晴。
お前の相棒。」
「ど、どうも…七原です。」
大森が長い廊下を歩きながら、背広の裾を摘まんでいる"千晴"こと、横山千晴の紹介を七原にする。
七原は横山の目をじっーと見つめていた。
やがて突き当たりの大きな部屋に入った。
「うわぁ…」
部屋の中央に堂々と置かれているグランドピアノ。
そのピアノを囲むように散らばっている、数千枚の楽譜たち。
冷たい大理石の床は、高級感などまるでなかった。
部屋は窓が一つもなく、完璧な密閉状態だ。
「ここって…どんな部屋なんですか?」
七原があたりをキョロキョロ見渡しながら、大森に問う。
「ここは千晴の部屋。」