FACT!〜交わる赤〜




高級感のある音のなかにも、大雑把さがある曲調は、聴いているものを、少し不思議な気持ちにさせた。





大してピアノのことなどわからない七原でも、彼のピアノの腕前は、相当なものだと分かった。






細く、長い指が、鍵盤を滑る。



「はっ…」



いきなり曲が止まった。




「今日はこんだけなん?」




大森が不満そうに首を傾げる。



「…そんな気分じゃない。」





ボソリと呟いた横山の声は、震えていた。

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