【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
「うちの部員がすまんかったね。けど、冷泉が言うとやけん、腰砕けになるほど上手いとやろうね?」



こいつ、やっぱ菊池のキャプテンだな。口調は穏やかでも、言ってることは挑発的。



「やだなぁ、買いかぶり過ぎっすよ」



バシィィ!



「!!!」



俺はその挑発に乗ることなく、視界の左にチラリと映った行雲先輩へボールを回す。



「チェッ!勝負はお預けばいね。(俺の揺さぶりを気にせんうえに、読めない程に磨かれたノールックパス…こん12番、思いの外、出来る)」



作戦通り、外側からボールを回し、相手も自分達も走り、行雲先輩から泰ちゃん、泰ちゃんから有ちん先輩。有ちんのからゴール下に走り込んだ行雲先輩、そこから俺に戻して、隙をついてピカ先輩へとボールが行く。



マンツーマンでピカ先輩を止められる高校生なんて、相当の実力者だろう。



ピカ先輩はそのまま、小さな体を活かしてドリブルで切り込んでいく。



菊池のセンターとの身長差はおよそ20センチ。



キュルキュルッ………!



けれど、ピカ先輩は普段のふんわり感ゼロの、鋭い目付きでゴールを背にする。



一度ボールがこちらに戻る。



… と、敵や俺達、誰もが思っていたが。




キュッ!キュルルッ!!



その味方さえも欺く動き。ボールはピカ先輩がドリブルしたまま、再びターンして、何かの魔法のように、あっという間にゴールに吸い込まれた。



水高、先制の瞬間。
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