【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
これくらいの痺れ、秀吉キャプテンの手の痺れに比べたらへでもねぇだろ。



俺は、なんてひ弱なんだ。情けない、情けない…!



悔しさにぎゅっと目を瞑り、歯を食い縛る。



すると、まだ震える掌にゴツゴツとした掌の感触と温もりが重なった。



そっと瞼を開くと、そこには眼鏡越しに困った顔で微笑む、有ちん先輩。



とても柔らかな光を帯びた瞳。有ちん先輩は人の心を和らがせる不思議な力を持っている。



「小鳥遊、お願いがある。聞いてくれんか?」



俺ほど明るくないけど、光に透けて茶髪に見える跳ねた髪の毛を揺らし、有ちん先輩は言う。



「俺は無力や。運動神経も才能も、何ひとつ皆みたいに秀でとらん。あるものは無尽蔵の体力くらい。やけん、俺ば助けて。一緒に戦おう」



有ちん先輩の強みは、自分の限界を認めて、そんな中でどうしたら役立てるかを知っていることだ。



朝早く長い距離を走り、朝練に来て、夜誰よりも遅くまで基礎練をして、部室の鍵を閉めて、また夜に走り込んでる、努力の人だ。



そんな有ちん先輩が、急にバスケ部に来てベストメンバーをかっ拐った俺に優しく、優しく笑う。



「俺…どうすれば?」



「回復するまで、俺にサインば送ってほしい。お前なら、俺が困るタイミング、わかるやろ?」



部活中、もしかしたら一番基礎練を一緒にこなしているかもしれない俺なら、今、ベンチで状況を見れる俺なら、きっと。
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