イジワルな彼の甘い罠
余程悪いようなら明日病院連れて行くか……俺の仕事は日中だけだから、即終わらせて、
「……航?」
「あぁ、早希。どうした?」
そうスマートフォンを片手に持ったまま考えていると、着替えを終えたらしい早希が力なく寝室のドアからこちらを覗く。
「今誰かと話してなかった……?」
「あぁ、悪い。お前の携帯鳴ってたから出た」
「勝手に出たの!?」
やはり勝手に電話に出られたことは嫌だったのだろう。早希は顔を強張らせると、自身を落ち着けるように「はぁ」と息をひとつ吐き出した。
「電話誰から?なにか言ってた……?」
「会社の先輩?で大木とかって人。体調悪いなら明日休んでいいって。だから休ませるって言った」
「なんでそんなこと勝手に……」
「勝手にもなにも、そんな顔色されて『仕事行かせます』なんて言えるかよ」
そう言いながらスマートフォンをテーブルに置くと、早希はそれ以上の言葉を飲み込み視線を足元へ向ける。
「つーかなに、お前今日早退したの?」
「……具合悪くて」
「風邪か?熱は?」
「っ、」
早希に問いながら近付き、その額に触れようと手を伸ばす。
ところが、早希はその手に触れまいと思い切り手を避けた。