イジワルな彼の甘い罠
「……よし、仕事再開!早く終わらせて帰るよ!」
「はい!」
そんな照れを誤魔化すように、熱いコーヒーをぐいっと飲み干すと、私はまた仕事に取り掛かる。
八代くんもそれに続くように、慌ててコーヒーを飲んでデスクに戻った。
見る目ない……か。
彼氏いそう、なんだって。
余裕あるんだって。
八代くんにはそう見えているんだって。
わかってるの?航。
こんなふうに気まぐれに呼び出すだけの関係で野放しにしておいて、他の男に捕まっても知らないんだから。
……なんて、心の中では言ってみる。
でもどんな私でも、あいつの中ではどうせ都合のいい女でしかないんだろうな
7年も一緒にいるのに、彼女にすらなれないんだもんね。
ひとりでつぶやいて、現実を思い出して。そんなことを繰り返しで、結局またへこんでいる。