イジワルな彼の甘い罠
それから私たちは眠気と疲労感に耐えながら、ひたすら仕事を片付けること一晩……。
「お……」
「……お……」
「「終わったー!!」」
窓から見える外が明るくなり、オフィス街にちらほらと人が歩き出す朝7時。
私と八代くんはふたり、やり終えた達成感にバンザイしながら喜びの声をあげた。
終わった……やっと終わった……!
ようやく帰れるという嬉しさに、はしゃがずにはいられず、彼とハイタッチまでしてしまう。
「おー、唯川と八代。本当に徹夜だったんだなー」
ちょうどそこに出勤してきた先輩は、髪もぼさぼさで疲れ切った顔の私たちを見て、「お疲れさん」と声をかけた。
「約束通り私と八代くん今日休みますね。じゃ、その分の仕事のフォローよろしくお願いします」
「げっ!俺だけ!?」
「昨日デートしたばっかりだから今日はないですよね?残業出来ますよね?じゃあ、お先に失礼しまーす」
笑顔で容赦なく仕事を押し付け、会話もそこそこに私と八代くんは会社を後にした。