イジワルな彼の甘い罠
「あー、さすがに徹夜きついですね」
「若い八代くんでさえつらいんだから、私なんてもう倒れそうよ…」
冗談混じりで言ってみせるけれど、太陽の眩しさが目に染みて本当に倒れそうだ。
これは一刻も早く、寝たい。
「大丈夫ですか?家まで送ります?」
「ううん、平気…あ、私帰りあっちだから」
「はい、お疲れ様でした!」
そして会社を出た所で方向が逆な彼とは別れ、ふらふらな足取りで自宅へと帰るべく駅へ向かう。
送ります、か……。
本当、いい子というか優しいというか……あのアゴヒゲに爪の垢煎じて飲ませてやりたいわ。
八代くんみたいな元気で優しそうな人とだったら、真面目な恋が始まっていたのかな。
……なんて、ね。くだらない、妄想だ。