イジワルな彼の甘い罠
「遅い」
時刻は18時50分。
シャワーを浴び、一度落とした化粧をまた塗り直し……と支度をしてやって来た、いつも通りの汚い部屋で、ドアを開けた瞬間ぶつけられたのは短いそのひと言だった。
「遅くないですけど。あんたが19時って言うからそれに間に合うように来たんですけど!」
「そもそも俺は昨日呼び出したんだっつーの。それを無視しやがって」
部屋へズカズカとあがる私に、ベッドに座ってテレビを見ていた航は、怪訝な顔で私へ視線を向けた。
「仕方ないでしょ、徹夜で仕事だったんだから。あんたみたいな自由業とは違うの」
「はいはい、会社員サマは大変デスネー」
って、なにその嫌味っぽい言い方!!
子供のようなその態度に、イラッと顔の筋肉が引きつるのを感じた。