イジワルな彼の甘い罠



「そんなに会いたかったなら、航から来ればよかったでしょ」



反論するように口を尖らせて言った言葉に、航から返されたのは「フンッ」と小馬鹿にするような鼻で笑った声。

それだけで、言葉などなくとも『なにアホなことを言ってるんだか』と言いたいのが伝わってくる。



「つーか俺、お前の会社も家も知らねーし。知ってるといえばアドレスくらいか」

「……言われてみれば私もあんたの番号知らないわ」

「ま、必要ないからな」



……これだけ会っていても、携帯番号のひとつも知らないなんて。

私とこいつらしい、と鼻で笑うべきか、それでも繋がりを持てていることがすごい、と喜ぶべきか。


そう話しながらも、『じゃあ教えようか』といった話題にならないふたりに、今更ながらこの繋がりの薄さを実感する。



「あ、言っとくけど別にお前に会いたかったわけじゃなくてヤりたかっただけだから。他の奴でも事足りるけど、どうせお前も一人で相手いないだろ?だから誘ってやってるだけ」

「なっ!」



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