イジワルな彼の甘い罠
遅刻をしそうなことをメールで伝えた私に、八代くんからきたのは『わかりやすいように丸の内側の外で待ってます』という親切なメール。
それを確認して、私は車から八代くんの姿を探す。
「えーと……あ!いた!」
「ひとりで行くんじゃねーの?」
「ううん、後輩の子とふたりだけど?言ってなかったっけ」
黒いキャリーバッグを手に待つ八代くんの姿を見つけ指差す私に、航のその目は鋭く細められる。
「……聞いてねぇ」
「あれ?そうだっけ?まぁいいや、行ってくる!車ありがとね!」
その反応を気に留める余裕もなく、停まった車からバタバタと降りた。
「帰ってきたらメシおごれよ」
「はいはい、どうせラーメンでしょ!」
そして私はキャリーバッグを車からおろして、大急ぎで八代くんの元へと向かう。