赤ずきんは狼と恋に落ちる
「千景さんっ!あの、ちょっと……待って下さい!」
あまり大声を出さない私のボリュームに驚いたのか、大人しく顔を上げ、撫でていた手も止めた。
「ごめん。怖かった?」
シュンとした表情に、思わず「何でもないです……」と言ってしまいそうだったが。
「怖いとか、そういうのじゃなくて……。その……、今、私、持ってないんです……」
敢えて何を持っていないのか言わなかったが、ここは察して欲しい。
しかし、この様子だとわざとらしく「何を?」と訊いてきそうだ。
「それに、まだ夕方なので、ちょっと……早いかなー……と。
それに、まだ私お風呂に入ってないし、せめてシャワーだけでも……!」
こんな雰囲気で言う言葉なのか。
ああ、ダメだ。慣れていないのが祟っている……。
つい1分前のオトナな空気とは一転、ここまで来てまだ色々と言ってしまい、気まずい空気が流れている。
もう、逸そのこと……
「すみませんっ!今すぐ買ってきます!!」
千景さんの胸を押し、髪もグシャグシャのまま、立ち上がって部屋に戻ろうとする。
も、後ろから手が伸びていることに気付かず、腕を引き寄せられ、千景さんの腕の中にすっぽりと収まってしまった。
「あかんやろ?そんなの、りこが買いに行っちゃ」