はじまりの日
最後の余計な感想は聞こえなかったふりをして話を続ける。


「雪さんの実家……横浜にあるんだけどさ、そこにも挨拶に行って。ご両親と、お兄さん夫婦が同居してるんだけど、向こうも俺のこと気に入ってくれたみたいで、多少心配はされたけど思いの外すんなりと結婚を許してくれたんだ」


「そりゃあ、あっちの家族からしたら万々歳だろーよ。お前みたいな若くてイキの良い好青年が、子持ちの娘、妹を嫁にもらってくれるっていうんだから。しかも公務員なら一生安泰だもんな」


「……こうなってくると、やっぱ早めに就職したのは正解だったよ。学生だったら、とてもじゃないけど許してもらえなかっただろうし。つーか、自分自身が結婚に踏み切れなかっただろうしな」


「そりゃそうだ。今の俺がまさにそうだもん。結婚なんて、まだまだ考えられねーよ」


腕を頭の上で組み、ベッドに寄りかかりながら話す徹に、俺は頷きながら返答した。


「そうだよな。お前、まだまだ遊び足りないからって進学したんだもんな」
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