はじまりの日
「あ、仕事で思い出した。お前、時間大丈夫か?」


ハタと気づいたようにそう言うと、徹は慌てて体を捻り、背後の壁かけ時計に視線を向けた。


「ああ、うん。そろそろ支度しないと」


つられて時計を見た俺は、いつの間にか出勤時間が迫っている事に気が付いた。


「ちょっとごめん」と言いつつ立ち上がり、自室を出ると、斜め向かいに位置する洗面所まで歩を進める。


歯を磨いてヘアスタイルを整え、再び部屋に戻ると、俺を見上げながら徹が若干気の毒そうに言葉をかけて来た。


「大変だな~、夕方から仕事なんてさ」


「いや、慣れればそうでもないよ」


世間は3連休だけど、配達局に勤める職員、アルバイトには、そんなものは何の関係もない。


土日祝は交替で出勤だし、さらに俺の勤める局は24時間体制なので、夜勤もあったりする。


だけど、そんなのは百も承知で郵便局を選んだ訳だし、お客様の来ない深夜の方が気分的に楽だ。
< 13 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop