はじまりの日
だけど俺自身がどう答え、どう行動したのかは、まったくもって記憶になかった。


気が付いた時には俺は、両側から親父とお袋に支えられるようにして雪さんの遺影の前に正座し、彼女のご両親と対峙している所だった。


恥ずかしい事に俺はあの後倒れ、数日間寝込み、雪さんの葬儀がすべて済んでからようやく、彼女の実家に伺う事ができたのだった。


「大変遅くなりまして、申し訳ないです。この度は本当に御愁傷様でございました」



木偶の坊と化した息子の代わりに、親父が先方に深々と頭を下げ、お悔やみの言葉を述べる。


「いえ……。一君の方も、さぞかし辛かった事でしょう」


気丈にも、自分の悲しみは押し隠し、雪さんのお父さんは穏やかな口調でそう声をかけてくれた。


最愛の娘を亡くしたばかりの人にそんな気を使わせてしまうなんて、そしてそれにとっさに相応しい言葉を返せないなんて、自分の情けなさ、弱さを痛感し、ますます気分が下降して行く。


「さて、今後の事なんですが……」
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