はじまりの日
線香をあげ終えた俺達を、祭壇がある和室の、隣のリビングに案内し、ソファーを勧めてから、お父さんはおもむろに切り出した。


「不幸中の幸いと言うべきか、籍を入れる前にこうなった事ですし、法律上は一君には何の義務もありませんから……」


「……え?」


テーブル上にある、雪さんのお母さんが出してくれた緑茶とお茶受けを見るともなしにぼんやりと見ていた俺は、その言葉に我に返った。


今さらながらにお父さんを見ると、親父達から俺へと視線を移しつつ言葉を紡ぐ所だった。


「来月から、雪達のアパートで暮らしてくれるつもりだったんだろう?でも、もうその必要はないから。引っ越しはキャンセルしてくれ。幸は我が家で引き取る事にする」


「え?で、でも……」

「そうですな」


隣に座る親父は俺の言葉を遮るように、すぐさま同意した。


「コイツが、一人で子育てなんてできる訳がありません。お互いの為にも、そうしていただくのがベストでしょう」
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