はじまりの日
「ち、ちょっと待ってくれよ」


話がどんどん進んで行ってしまう事に、俺は焦りと、そして仄かな怒りが込み上げて来た。


いや、常識的に考えたら、そうするのが当然なんだけど。


だけどその時の俺には、その突然の申し出が、とても理不尽な事のように感じられ、到底受け入れる事などできなかった。


自分でも、何故そのタイミングだったのかは不思議だけれど、雪さんが亡くなってから屍のようになっていた俺の心に、久しぶりに訪れた感情の高まりだった。


「何が『待って』なんだ。まさかお前、さっちゃんを引き取るつもりじゃないだろうな?」


「親父はちょっと黙ってろよ!」


散々心配させて迷惑をかけておきながら随分な物言いだったが、そこで引っ込む訳には行かなかった。


「お言葉ですが、お兄さん夫婦にもお子さんが二人、いらっしゃいますよね?そこにさらにさっちゃんが加わるなんて、経済的に大変なのではないでしょうか?」
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