はじまりの日
「え?」


「物理的にも。人一人分の生活空間を確保しなくちゃいけない訳ですから。雪さんが生前言っていたんです。旦那さんが亡くなって、最初は実家に頼ろうかとも思ったけれど、お兄さん夫婦が同居しているし、自分達の生活だけでも大変だろうにさらに負担をかけるのは申し訳ないと」


「いや、しかし、それは……」


「それに子どもは敏感だから、絶対に大人達の、複雑な胸の内を感じ取ってしまうハズ。幸に肩身の狭い思いをさせるのは可哀想だから、実家には極力頼らずに、何とか頑張って来たんだと。その時俺は改めて、今まで苦労して来た雪さんとさっちゃんを、絶対に、幸せにするんだと心に誓いました」


「よしなさい、はじめ!」


それまで静かに会話に耳を傾けていたお袋が、思わず、という感じで口を挟んで来た。


「何でこんな時にそんな事を言うのっ。失礼でしょう!」


「あ、いや、奥さん。どうぞ、お気になさらず」
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