はじまりの日
お父さんは慌てて仲裁に入った。


「そうか……。自分の生活がこれからどうなってしまうか分からないという時に、そこまで私達の事を考えていたんですな。わが娘ながら、誇らしく思います」


言葉を失ったお袋に、穏やかに微笑んでみせてから、お父さんは改めて俺に視線を合わせた。


「教えてくれてありがとう、一君。確かに、子どもを育てるのに、キレイ事じゃ済まされない時も多々あるよね。私と家内はともかく、息子夫婦、特に嫁は、正直、不安や戸惑いの方が大きかったと思う。そうせざるを得ない状況だから最終的には了承してくれたけれど、心から幸を歓迎してくれているかといったらそれは微妙な所だ」


「でしたら……」


「だけどね」


俺にはみなまで言わせず、お父さんは続けた。


「親族でさえ並々ならぬ覚悟が必要なのだから、全く血の繋がりのない、紙の上でも赤の他人の君が、幸を引き取って育てるなんて、それこそ困難で非現実的な事だと思わないかい?」
< 24 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop