はじまりの日
「お兄ちゃ~ん」


「……ん?」


下から見上げて来るさっちゃんに、自然に顔を綻ばせつつ返事をすると、彼女は眉尻を下げ、瞳をウルウルさせながら問いかけて来た。


「ママがいなくなっちゃったから、もう、さっちゃんのパパにはなってくれないの……?」


「こら、ダメでしょさっちゃん!」


再びお母さんはさっちゃんに近付くと、彼女を抱き抱え、強引に俺の膝の上から降ろそうとした。


「いや~ん」


しかしそれよりも強い力で、俺はじたばたと暴れるさっちゃんを、背中から強く抱き締める。


「嫌ですっ」


何があろうと絶対に、離しはしないと誓いながら。


「俺はもう二度と、雪さんには会えないんです。だったらせめて、さっちゃんだけでも、俺に下さい!」


「いや、「下さい」ってお前そんな、犬や猫の子じゃあるまいし……」


呆れたように発せられた親父の言葉を全力で無視して、俺は必死に続ける。
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