はじまりの日
「さっちゃんまで、俺から取り上げないで下さい。そんな事をされたら、俺はもう、生きてはいけないっ」


大事な場面だというのに声が震えて上ずってしまって、うまく言葉を繋ぐ事ができなかった。


しかも追い討ちをかけるように、涙がブワッと溢れ出した。


次いで鼻水も。


「うゎぁ~ん!」


そんな俺の感情が飛び火したのか、さっちゃんも声を上げて泣き出す。


そんな彼女を凌ぐ勢いで、みっともなく盛大にしゃくりあげ、顔中デロデロにしながら、それでも俺は、形振りかまわず、必死に懇願し続けた。


「一生大切にしますから、だからどうか、さっちゃんを、俺に下さい。お願いしますっ」



……【泣き落とし】が可愛い女の子だけの専売特許ではなかったのだと、初めて気付いた20歳の秋。


俺の陳情に根負けした大人達は、最終的には、さっちゃんと一緒に暮らす事を許してくれた。


色々と条件付きではあったけれど。
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