はじまりの日
「お前の勤務体制は不規則なんだから、とてもじゃないけど一人でさっちゃんの面倒を見るのは無理よ。アパートは引き払って、家に来なさい」


いざさっちゃんを引き取るとなったら、俄然お袋は張り切り出した。


泣き過ぎて疲労困憊の俺に代わり、その場の議長となってサクサクと話を進めて行く。


基本的には控え目で、自己主張をするのは苦手だけれど、もう『やるしかない』『後には引けない』となった時には大いに開き直って(ほとんどやけくそになって)眠っていた能力を遺憾なく発揮する、そういう人であった。お袋は。


「養子縁組みは、今の段階では見合わせた方が良いでしょう。一君はまだ若い。いつ何時、雪よりも大切な人が現れるか分からない。その時に、幸が足枷になってしまっては申し訳ない」


「そうですね……。さっちゃんがどうこうと言うよりも、本人に、父親としての自覚がきちんと芽生えて、私達も納得ができた時に、しかるべき手続きをする、という方が良いでしょうね」
< 29 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop