はじまりの日
同じ社会人として、今までよりも、より踏み込んだ会話ができる。


そして正々堂々と、愛の告白をする事ができる。


そんな風に考え、俺はこの上なく浮かれまくった。


新人研修を経て再び古巣に戻った俺は、大胆に彼女に好き好き光線を注ぎ、食事やデートに誘いまくった。


最初は断られる事が多かったけれど、段々と誘いに応じてくれるようになり、それに比例して、彼女の心が徐々に俺に傾いて来るのが感じられた。


そしてついに、奇跡が訪れる。


何度目かのデートで、ようやく彼女が、俺の思いに答えてくれたのだ。


「だけど……。本当に私で良いの?」


付き合いを承諾したにも関わらず、彼女は神妙な顔付きで問い掛けて来た。


「もちろん。何か問題ある?」


祝杯のつもりで頼んだワイン片手に、俺は対面の席に座る彼女に、あえて陽気に聞き返した。


ファミレスのワインだから味は大したことないんだろうけど、その時俺はやっと20歳になったばかりだった。
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