はじまりの日
まだまだ酒の良し悪しが分かるような舌なんか持ち合わせていなかったので、全く問題はなかった。


しかし、思わずそう問いかけてしまった彼女の気持ちも分からなくはない。


これまた俺には何の問題もない事だけど、世間的には、結婚を前提に付き合う男女にとって、それはなかなか複雑な事情であったから。


しかし彼女を安心させるように、俺は満面の笑みを浮かべながら、彼女の隣でお行儀良くお子さまランチを食している彼女に向かって言葉をかけた。


「な?さっちゃん。俺とママが結婚したって、何の問題もないよな?」


チキンライスの山をせっせとフォークで崩し、それをすくい上げ、今まさに口元に運ぼうとしていた彼女は俺の言葉に顔を上げた。


「うん」


至福の時を妨害されたにも関わらず、彼女は全く気分を害した様子もなく、ニッコリと、無邪気に笑いながら続けたのだった。


「はじめお兄ちゃんがパパになってくれたら、さっちゃん、すっごくうれしいよ!」
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