はじまりの日
「今年5歳になる、おんなの子だとぉ~!?」
「うん」
俺の部屋のベッドの前にあぐらをかいて座り、若干前屈みの姿勢になりながら素っ頓狂な声を発するわが従兄弟に、俺はあえて冷静な表情、声音で頷いてみせた。
コイツと会うのは久しぶりだ。
母方の従兄弟で同い年の、池田徹。
生まれは同じ都内なんだけど、コイツは何と北海道の大学に進学してしまったし、お互い何かと忙しく、こうしてゆっくり膝を突き合わせて話すのは実に2年ぶりだった。
俺が婚約したというのを叔母さんから聞いて、慌ててすっ飛んで来たらしい。
3連休を利用してるので授業の方は大丈夫みたいだけど、ハードスケジュールである事に代わりはなく、しかも一回の帰省にかかる費用は半端ない。
まったく、ご苦労な事だ。
「その若さで婚約、しかも相手が6歳も年上ってだけでも驚きなのに、その上子持ちかよ~。お前、本当にそれで良いのか?」